2008-01-01から1年間の記事一覧
厄除けにもらった鈴のお守りが天空に鳴る夜毎みる夢新井蜜の短歌日記
排水に湯気が立ってるたそがれの路地に微かなシャボンの香り新井蜜の短歌日記
紫の木槿がひらく坂道を追いついてくる素足のミュール新井蜜の短歌日記
眠れずにナイフを探すうずたかい洗濯物の山の中から新井蜜の短歌日記
Lサイズ探してみたが見つからずはみ出すだろう朱夏のからだは新井蜜の短歌日記
かざしもに押し流されてゆがむ雲嫌悪を浴びて黙る草木は新井蜜の短歌日記
テーブルに鱗がひとつ落ちていて午後の会議に身が入らない新井蜜の短歌日記
朝な朝なジュリーの写真に手を合わす卒寿の母の永久の悲しみ新井蜜短歌日記
梅雨寒の父の日に子ら集い来てピアノに遊ぶ「槌音高く」短歌日記
おおふけえおおふけえなど言いながら泥田を廻る抜けられなくて短歌日記
一斉に走る車の風圧で路面を滑り行くポリ袋短歌日記
教室のかびんに挿したひまわりが枯れてしまっていた登校日短歌日記
船底の狭いフロアに雑魚寝して足の臭いを嗅ぎつつ眠る短歌日記
雨のなか手紙をだしに行くと言い戻ってこない 空腹である短歌日記
生い立ちを語るあなたの肌白く嘘かも知れぬと思いつつ聞く短歌日記
渇いてるひとの集まるドトールの大テーブルで香川ヒサ読む短歌日記
おやすみを言わず別れてひとり居る夜更けの窓に繁き雨音短歌日記
うがいする男がひとり朝靄の街に向かいて喉(のみど)見せたり短歌日記
さっきから誰かがあとをつけてくるあなたのあとをつける私の そのくらさまばらなはやし立ちしゃがみはるか深くに伸びあがるもの うしろからおしてもらってベランダのさくからとんだかぜ切りおちる 回送の新幹線が止まってる白い車体を横で見ている 歩けない…
薄暗い廊下の端の手洗いの鏡に映る在りし日の父短歌日記
指差して確認するはこの部屋に我のほかには誰もいぬこと短歌日記
真夜中にみず飲みにいくのはきらいトイレのドアがきいっとなるから短歌日記
火薬庫に近づいていく僕たちの帽子のつばを汚す小鳥ら (新井蜜)短歌日記
蛍篭つるした蚊帳の裾くぐり川の字となる叶わない夢短歌日記
雲井阪ふたりで歩くおそ夏の降り止んだ午後葛切り食べに短歌日記
艶々と黒い毛の犬寝そべって歩道をふさぐ雨催いの朝
眠れずにナイフを探すうずたかい洗濯物の山の中から
ひとつだけ朝顔ひらき誰もいぬ運動場に降る宇宙線 (新井蜜)
幾十の破片となりてそれぞれの宇宙を映す投げた手鏡
迂回して撃ちに行くけど方法を忘れはしない聞き耳たてる