2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧
左手のリズムがずれてフルートの穴を数えるまた初めから新井蜜の短歌日記
煙草屋の角を曲がって三軒目お茶屋の二階に一人で暮らす新井蜜の短歌日記
カバン下げ雷鳥に乗り「塔」を読む選挙が近い春の一日に新井蜜の短歌日記
宇都宮餃子の店にきみと行く五月雨の日の午後の約束新井蜜の短歌日記
そよ風にゆらりふうわり誘われて春のおすすめ手長えび食う新井蜜の短歌日記
奈良坂で出会った鹿は振り向いて俺の背中をじっと見ていた新井蜜の短歌日記
ブラウスの白に隠れてひそやかに息づいている恋するピンク新井蜜の短歌日記
怪しげな夢見て過ごす引退を目前にしたこのゆるい日々新井蜜の短歌日記
春の宵熱おびひかるきみの名に丸く小さな済の印捺す新井蜜の短歌日記
耐えられず世界を消したくなったなら魔法の砂をふりかけなさい新井蜜の短歌日記
かんからにろうそくをつけ転がせば縁側に蝋のにおいこもるも 新井蜜の短歌日記
年収に満足できず足してみるアドレス帳に書かれた数字新井蜜の短歌日記
うそ寒いひかりのもとで三月の別れの式は開かれぬまま新井蜜の短歌日記
忘れたと言い張る姉が夢にみる首を掻かれた父親の顔新井蜜の短歌日記
夕顔はひそやかに咲き待っている妊娠線を越えたあたりで新井蜜の短歌日記
若鹿の造反有理年ふればこの縄張の内に囲われ新井蜜の短歌日記
感情の干満或いは満ち欠けに言い訳をせず受け入れるのみ新井蜜の短歌日記
冷静に話し合えない人がいて災いとまでは言わないけれど新井蜜の短歌日記
選ばれた者たちの朝 兄さんはソムリエだった蜂起の前は新井蜜の短歌日記
梅がまだ満開でない三月の最初の休みまた鹿に逢う新井蜜の短歌日記
帰国まえもう一度だけ会いに行く夜警のきみを忘れられずに新井蜜の短歌日記